2月
「おもてなし」のウソ
やればやるほど顧客は逃げる
こんなショッキングなタイトルがビジネス誌で特集された。
このタイトルを見てすぐ頭に浮かんだのは、ガソリンスタンドで燃料を入れただけで
店員さんが車が見えなくなるまでお辞儀をするお見送りサービス。
あまりの仰々しさに逆にそのスタンドを避けるようになった。
その過剰サービスに違和感を覚えたのは私だけではなかったと思う。
お見送りといえば、店で買い物をしたあと出口まで同行して商品を渡されることがよくある。
お客に特別感を演出しているのだろうか。私ならやめて欲しい。
美容院でシャンプーをしてもらう時、お湯加減はいかがですか?熱くないですか?
と聞かれることにも違和感を感じる。正直返事をするのが面倒だ。
「お湯加減なんてあなたの手で洗ってるんだからわかるでしょ!」といつも心の中で叫んでいる(笑)
お客に返事を求めるわずらわしさが逆に悪いサービスになっていると思う。
行為の本質を考えず慣習的に行われているサービスはどの業界でも多々あるのではないだろうか。
一流と言われるホテルやレストランなどでは、誰しもそれなりのサービスを期待すると思うが
コンビニの買い物で一流ホテル並みのおもてなしを求める人はいないだろう。
客が並ばないようにすぐにレジを開けてくれるだけで、私は充分良いサービスだと思う。
研修旅行で台湾に行った時も思ったが、人気の飲食店でも店員さんは無愛想で当たり前。
そんな光景を海外ではよく見る。
その点、日本の接客は何処へいっても安定していて世界レベルだと思う。
過剰サービスには、過剰な包装・過剰な接客・過剰な割引・過剰な点検などあるが、
昨今はかなり見直されてきていると思う。
ガソリンスタンドも、スーパーのレジも、店員さんのしつこい接客もセルフに変ってきている。
そしてそれで、だれも不自由をしていないと思う。
それ相応のレベルにあった適度なサービスがお互いに良いのではないだろうか。
何事も度が過ぎると、どこかが疲弊して長続きしない。
一番衝撃だったのは、
「顧客満足度は日本の文化にそぐわない。
欧米発の指標を無批判に輸入するのは百害あって一利なし」
というくだりだ。
欧米が自分を中心に据えて行動する「自己中心の文化」に対し、
日本は相手との関係性を重視する「間柄の文化」。
つまり客と店員は対等という立場にある。
そこに欧米式の顧客満足度を導入すると客がサービス提供者を評価する立場になる。
すると両者の間には上下関係が発生し、評価が下がるのを恐れると
店側は減点を防ごうと従業員の動きをマニュアルで縛ろうとする。
客の要望によりマニュアルはエスカレートし、
その結果従業員は心から客をもてなす余裕を失ってしまいサービスの質は下がるという理論だ。
「お客」という言葉が日本の中でおかしな権力を得て、
日頃は常識的で穏やかな人も
「客なんだから」と些細なことで相手を批判し
気がつかない内にクレーマーになってしまう。
「人の心は弱い。客は評価を下す立場になると
自己愛がくすぐられ、自分を正当化し
店側に無理難題を突き付けるようになる。
『お互いさま』の時代に戻さなければサービスの現場が持たなくなります」
と識者は語っている。
身につまされる思いだ。
自分がそうなっていた気がする。
「お互いさま」
「おかげさま」
という日本人が元来持っている気質を皆が受け継いでいるはず。
これをとり戻さなければ自分自身もサービス業に携わる資格がない。
自社のサービスも、本当は必要がないものを「良いサービス」だと思い込んでいないか?
必要なのに出来ていないサービスは無いか?
ごまかしのサービスになっていないか?
今一度原点に返って考えてみる事が必要ではないだろうか。
PS:先日神戸の居酒屋さんで食事をした。
店員さんが皆元気で明るく気さくで「感じがイイ」。
質問になんでも答えてくれるし、料理も期待以上に美味しかった。
こんなお店は平日でもやはり繁盛していた。
マニュアルに沿っての接客ではなくその店が持っている「おもてなしや心意気」が
店員さん皆に伝わっているからだろう。