1月
72代横綱 稀勢の里が誕生した。
今週はこのニュースでもちきりだ。
何と言っても日本出身力士の横綱誕生は
若乃花以来19年ぶりだからなおさらだ。
そして稀勢の里は大関昇進後31場所目での初優勝で、
歴代で最も遅い記録になった。
待ちに待った悲願の優勝だ。
稀勢の里の凄いところは休場する事が一度もなく、
唯一昨年の1月場所で、怪我で一度不戦敗になっただけ、
それまでの連続出場が953回という途方もない記録を持っているところだ。
30歳、遅咲きだが叩き上げの力士である。
そして私が感動したのは千秋楽の白鵬を破った時の姿だ。
綱取りがかかった大事な一番で白鳳に勝った瞬間、
普通だったらガッツポーズをして喜んでも良さそうなところだが、
稀勢の里は「これがおれの実力だ」と言わんばかりの冷静な表情でたたずんだ。
カッコイー!
どんなスポーツでも勝てばポーズをとって声を上げて喜ぶのが普通だ。
でも相撲は違う。
相撲は国技でもあり、スポーツという言い方とはニュアンスが少し違う。
もともと相撲は、日本古来の神事や祭りが由来になっているので
武芸、武道と言った方がしっくりくるかもしれない。
相撲は勝ったからといって笑顔で喜んだりしない。
命がけの「勝負」だからだろう。
そして相手への礼節を重んじる。
勝ってもはしゃがずに冷静にたたずむ力士を見ていると
そのかっこよさに感動してしまう。
究極のダンディズムだ!!
そして思い出すのはリオオリンピックの柔道で金を獲った大野将平選手だ。
決勝戦で一本勝ちを獲っても、畳の上でガッツポーズなどしなかった。
この時の実況中継も、凛とした大野選手を讃えていた。
日本柔道は「金を獲って当たり前」という覚悟があったからだろう。
柔道も日本発祥の武道でありそのお家芸であるからには
銀や銅ではなく金を獲らばければならないという宿命を抱えている。
まさに相撲と同じ命がけの「勝負」であろう。
頂点に立つ男ははしゃいだりしない。
頂点に立つ男は顔つきも違う。
明らかに凛々しい。
(↓勝負でこんなにはしゃぎません。笑)
相撲の話に戻るが、
稀勢の里が横綱に決まった時のインタビューの言葉がまた良い。
「尊敬される力士になっていかなければならない。
稽古場の立ち居振る舞いもそうだが、周りから生き方も見られるので
そういう所も模範になるように頑張りたい。」
この言葉を聞いて、やはり横綱という重みは計り知れない程のものであり、
頂点に立っても精進し続けるという事に対する決意と謙虚さが伝わってくる。
増々感服した。
相撲には礼儀、品格、美学という言葉が似合う。